田舎のパン屋が見つけた腐る経済

これはサクセスストーリーではなくて、豊かに生きるための心得であり、

経済の事もちょっぴり分かるパン屋さんの軌跡のお話。


この本は、友人から強く勧められ、ある日本屋で見つけたので購入。

その友人は京都大学に通っていて、ものすんごく頭の良い子ですが

卒業後は田舎の林業家として就職した面白い子。

でも頭が良いからこそ、すごく本質を見抜いていて

それでいて発想が柔軟なので面白いことに色々と取り組んでいる。


さて、そうだなあ。

この本をどう紹介しよう。


最近、こういう本をよく読んでいる。

誰かが目標に向かって動き、苦労しながらも、それを形にする話。

意図してるわけでないけど、人の体験ばっかり読んでいるとちょっと飽きてくる。

小説なら登場人物たちに感情移入して、まるで自分が体験してるかのように楽しいけど

こういう本は感情移入せずに客観的に読むからね。


でも、これは経済の話や菌・発行の世界の話も織り交ぜてあるから

一人の体験談としてだけじゃなく読めて良かった。

とっても良い本だったから、もちろん、星5つ!


タイトルの「腐る経済」を見て、最初私は、

現代の経済を批判しているんだと思ったんだよね。

システムが腐っているって。でも違った。

著者が「腐る経済」を目指しているという話だった。


目次を見ると本は二部制になっていて、

一部は「腐らない経済」二部は「腐る経済」とある。


第一部ではマルクスの「資本論」で得た知識を織り交ぜながら、

実体験を元に、現代の資本主義社会の問題点を指摘している。

なんとパン屋を目指して最初に働いたパン屋では、

深夜2時から働き始め夕方の18時以降に終わる事もざらだったらしい。

ブラック・・・でも日本なら十分あり得る。


これは「利潤」を求めた結果であると著者は言う。

働けば働いた分だけ、パンをたくさん作って売ることができる。

そうすれば売り上げが増えて、利益も増える。

その一方で労働力は日給で払えば、何時間働いても変わらない。

(本来はここに残業代が出て、利潤の上がり方も抑えられるはずなのに・・・)


だから労働者は賃金が一定のまま、労働力ばかりが搾取されるとあった。

この環境下だと、お金は労働力の大小に関わらず

どんどんと利潤という形で増えていく。

お金が尽きることはない。

「腐らないお金」で成り立っているから「腐らない経済」。


その腐らない経済を独自の方法で解決しようとしたのが、

ファンタジー作家のエンデで、この著書ではエンデの遺言から引用されている。

(てっきり学者だと思っていたエンデがファンタジー作家と知ってびっくりしたけど、

子供達に大切なことを伝えることが大切と思ったんだろうな)

「腐らないお金」と「腐るお金」、二種類を流通させればいいって。

「腐るお金」は地域の中で循環する地域通貨。

勝手に増殖しない。つまり利潤を生まないというもの。

「腐らないお金」は資本用に、お金でお金を増殖させていくもの。

利潤を生むもの。


それが、第二部で、これまた著者の実体験とともに語られている。

実際、著者は利潤を生まないよう材料費、維持費、人件費に割り当てている。

これは「こうやったから自分は成功した!」というビジネス書じゃない。

「こうやって自然と生きなければならない!」「利潤を生み出す経営はダメだ!」

という押し付けでもない。


私たちに「生き方」を提案する本であると私は思う。

「利潤を求めなくても経営できた!」

「自然を相手にすると、楽しくなった!」

そんな生き方を、実体験を元に教えてくれている。


また本書を通して「お金とは」という本質を問いかけている。

私たちは今、お金に振り回されている。

お金の増やし方という本もあるし、お金が人をダメにするという本もある。


取捨選択。


お金をどういう風に使うか、まずはお金を知り、その上で取捨選択する。

その結果、お金を増やすもよし、お金を現状維持にするもよし。

著者はその考え方のヒントを本書で書いた上、彼は「お金を腐らせる」事を選んだ。

じゃあ読者はどうする?

そんな問いかけもあると思う。


正直を言えば、菌についても、経済についても、お金についても、

ある程度の知識があったから目新しい発見はそこまでなかった。

でもこれらも3つをまとめて同時進行していくのは面白かったし、

こことここが繋がるんだなあ〜

やっぱり最後には「お金で自分が何を選ぶかで社会が作られる」んだな〜

という発見はあった。

改めて問いかけられることで、より考えを深めることができた。


この本をお勧めする相手は、、、

やることがない!と焦っている20代後半の人じゃないかな。

なぜなら、著者自身29歳あたりまでフラフラしてて、

30歳あたりから考えが変わり始めて今に至るからね!


パン屋になりたいっていう人にもお勧めだけれど、

ぜひこういうパン屋を目指して欲しいけど、これはかなり茨の道だと思う笑


あとは、発酵・経済に興味がある人にも面白いんじゃないかな?

発酵と経済は繋がっている。

これは人それぞれの考え方によるけど、

私は自然が生み出した人の考えるものと、自然の営みはやっぱりどこかで

リンクしている、循環からは抜け出せないと思っている。

効率を求める世の中は、循環から抜け出そうとしているけどね。

不老不死・・・

これはまた別の機会にじっくり考えたい。


夏になったら、是非とも、タルマーリーに旅行がてら行ってみたい。

タルマーリーだけじゃなく草木染めをはじめとする職人さんが残る

勝山自体にものすごく興味が湧いた。

2コメント

  • 1000 / 1000

  • Koaki

    2019.03.05 09:07

    @加藤翼翼君、ウェブサイト見ててくれたんですね!ありがとうございます涙 絶対絶対行きます!何はともあれ、和食パンを食べたくって!笑 その時は翼君にも連絡をするので、会って話せたらいいなあ^^ 本当に素敵な本と出会わせてくれて、ありがとうございました!!
  • 加藤翼

    2019.03.01 11:10

    読んでくれてありがとうございますー! ぜひ機会があれば、タルマーリーまで来てくださいー! ただ、その本が書かれた時から、時を経て、今は鳥取県智頭町という町にありますよ!僕も今はその町に住んでます!