人口減少社会の未来学

この本は、私たちが将来に備えて何ができるかという

色んな立場や職業に就く人々が、各々の見識で分析した上で

語りかけてくるものだと思う。


しかし、読んでもはっきりとした答えは書いていない。

問題への切り口は十人十色。だから答えも十人十色。

彼らの言葉を受け止めて、自分で考えることが大切なんだろう。


この本には、11人の著書がいる。

経歴は様々で、生物学者・経済学者・政治学者を始め、劇作家・保育士・建築家など幅広い。

各自の持ちページは20ページ前後なので、読みやすい。


この本の良いところは、多様な意見が書かれているので、考えが偏りづらい。

中には地方創生に繋がる鍵も散りばめられていた。


というのも、結局少子化というのは、

子供を産みにくい・育てにくい社会が背景にあるから。

人工過多な東京にその社会サポートが望めないのなら、地方に光がさす。

地方に移住者を呼び込む、一つの切り口だと思う。


さらに政治も関わってくる。

政治が緊縮財政を始め、社会保障や福祉面で削れるコストを削った結果

人々の生活が苦しくなり、少子化に繋がっていく。

イギリス在住の著者の一人が、イギリスの実際の動きを書いていて、

これが私の中では一番興味深かったな。


生物学の話もとても面白かった。

キャリング・キャパシティ(環境収容力)というのがあって、著者曰く、

ある地域で、ある種が維持可能な個体数の上限のことらしい。

地球環境の資源を使いすぎている今、人類のキャリングキャパシティは、

とっくの昔に超えちゃっている。このままじゃ人類は資源が足りずに絶えてしまう。

そう本能的にわかってるから、数を減らそうとしてるんじゃないのかな。

さらには地球を飛び出して宇宙に新天地を求める個体が出てきたんじゃないのかな。

なんて風にも思ってしまう。


また、岡山県の話も面白かった。

若い女性に好まれない自治体は滅びるというタイトルで、

実際に女性の子育て支援に重きを置いている岡山県の事例の話。

これが子供を産みやすい、育てやすい社会にすることが

少子化の解決策になるということを一番わかりやすく述べてた。


少子化と聞いて、やっぱり対策としてすぐに浮かぶのが「母親の子育て支援」。

だけどもっと色んな立場から、色んな切り口でこの問題を紐解くと、

いろ〜んな原因が浮かび上がってきて、そのどれもに根拠がある。

切り口が違うと、通る道、つまり解決手段も違う。

だけど、出口はどれも一緒なような気がする。


この本を読んで思った出口はやっぱり、

一人一人の意識と行動が未来を作るということ。

みんながこの問題を意識して、社会のあり方を変えていけば

少子化問題を切り抜けることができるはず。


仕事を持つ人々には難しいかもしれないけど、

待機児童が多いなら、少ない地方へ移り住むとか。

東京に保育園を増やしたところで、少子化するなら、いずれはその保育園は潰れてしまう。

根本的な解決にはなってないと思う。


長期的な視点に立って解決策を考えたら、やっぱり地方に住むことがいいんじゃないかと。

そのためには、企業や社会の風潮の支援も必要。


そんなことを、自分の答えとして考えた。


一部、ちょっと話が小難しかったけれども、

全体としてはとても読みやすいし、理解もしやすい。

人口減少に興味がなくとも、勉強になる部分はあるし、最初の方で述べたように

地方創生に繋がる鍵もいくつか見受けられた。


人口減少をきっかけに、色んな分野の話を聞けてとってもお得な1冊。


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