かもめのジョナサン
私とかもめのジョナサンとの間には、
ちょっとしたストーリーがある。
私はよく本屋で立ち読みをする。
その日も特に買いたい本はなく、ただ目にとまるタイトルの本を手に取り
さっと中身に目を通しては、棚に戻していた。
かもめのジョナサンも、何度か目にしたことはあったけど、
今まで何故か手に取る気分にはなれなかった。
その日は、読んでみようと言う気になって、ページを開いたけれど
買おうかどうしようか悩んで、結局やめた。
購買意欲の低い日だったらしい。
数日後、じわじわと「ああ、かもめのジョナサンが読みたい!」
と言う衝動に駆られた。
地元の小さな書店を巡ってみたけれど、全く見つからない。
なんと言う事だ。
やっぱり買っておけばよかったと、後悔が襲う。
かと言って都内の大きな書店まで、遥々いく気にはなれず、
いつしかジョナサンのことは忘れてしまった。
・・・そして、またある日。
私は本屋をなんとなくうろついていて、ついに
ジョナサンと巡り合った!
すぐさま手に取り、会計を済ませて、家に帰った。
これは私の好みに、どハマりした本だった。
なぜ今まであんなに買うのを渋っていたんだろう。
私のばか。
これはジョナサンと言う、かもめが主人公。
かもめ達は毎日餌を取るために空を飛んでいるけど、
ジョナサンは違った。
どれだけ早く飛べるか、水中すれすれに飛べるか、
自分を試していた。
「それが出来た所で何になる。魚が沢山取れるわけでもないのに」
周囲の反応は冷ややかだけども、
ジョナサンは気にせずに飛行の特訓を続ける。
そのうちに、彼と意気投合する仲間をはじめ
彼を敬うかもめ達が次々と登場する。
ジョナサンの一生と、その後の世間の話。
これがざっくりとした、あらすじ。
タイトルの完全版、にも勿論意味がある。
なんとこの話、当時は最終章が載せられていなかった。
完結はしていたんだけど、実は作者の手元には載せないと判断された幻の原稿があり、
完全版ではそれが付け足された形で終わる。
私は終わりは潔い方が好きなんだけど、
これはこれでまあありかな。
ない方が好きだけど。
かもめのジョナサンの世界観は、まさにそのまま、
現代の私たちの姿と重なる。
意味のない事をやってどうなる?
その問いにジョナサンは、彼は行動で答えてくれる。
結果をもたらした後、周囲の反応は一変して、スターとなる。
誰もが憧れて、彼と同じ事を繰り返す。
繰り返すうちに、真の意味が失われていく・・・。
大切な事は何か。
本質ってなんだっけ。
そんな事を思い出させてくれる本。
とっても読みやすいよ。
なんとなく、ゆったりした気持ちで、
自己啓発要素の本を読みたいときにお勧め。
かもめを見ると、「おっ。ジョナサンか?」なんて思ってしまう。
作者:Richard Bach
翻訳:五木寛之
頁数:198頁
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